いつまでも平凡な日々が続くと思っていた。キミがあたしを裏切るまでは。
人は、誰かを傷つけて生きていくもの。
だけどそれは、誰かを笑顔にした代償として、生まれるもの。
私は”ライ”に、それだけの笑顔を貰っただろうか?
私は”ジュリア”に、それだけの笑顔を貰っただろうか?
生きてみせる。きっと生き抜いてみせる。
たとえどんなに酷いいじめだろうと、私は”ライ”にも”ジュリア”にも負けない。
だから覚悟しておいて。
いつかきっと、償わせてあげる。
*
”ジュリア”が”ライ”のところへ行ってから、いじめはエスカレートした。
基本、いままでは無視が多かったのだが、最近では質の悪い嫌がらせが多くなっていた。
全ては”ライ”の仕組んだ事。それはクラスのみんなも知っている。
でも、誰1人として”ユメ”を救う者はいなかった。
そう、かつての”ジュリア”のように強い者は―……。
*
「何、これ―……」
ある日、教室に入ると、私の机の上に泥が塗ってあった。
椅子に座ると、ネジを緩めてあったのか、ガタンっと大きな音を立てて崩れ落ちた。
その時指を隙間に挟んでしまって、少し血が出て痛かった。
「見てジュリア!あいつ体重重すぎて、椅子が壊れちゃってるよっ」
「ほんと。だっさっ。」
”ライ”を軽く睨む。
次いで”ジュリア”に目をやる。
一瞬、目が合ったが、すぐに逸らされた。
事ある毎に、私は、いつか復讐してやる、と思うようになっていた。
殺したっていい。
自分が壊れてしまう前に、絶対に復讐するんだ。
その為なら、誰の命も惜しくない―……
そこまで考えて、私は我に返った。
そして途端に怖くなった。
そんな考えをいつからか持つようになった自分に、恐怖した。
いつの日か、笑いあって語り合ったあの時を、忘れてしまったの?
あの頃はあんなに楽しかったじゃない。
殺してしまったら、その思い出を穢してしまう。
せめて美しかった頃の思い出だけでも、綺麗なままで残しておこう。
自分に、言い聞かせる。何度も何度も、言い聞かせる。
だけど。
本当にこれでいいのかな?
”ライ”も”ジュリア”も、何もやり返さない私に付け上がって、毎日飽きもしないで嫌がらせを続けているのだとしたら。
少しくらいの過ちは、過ちではないのかもしれない。
日が過ぎる度に、疑惑が膨らんだ。
恐怖と疑惑
2009/5/6 : 加筆修正