いつまでも平凡な日々が続くと思っていた。キミがあたしを裏切るまでは。
悪夢の中で育った私のその時代は 一生癒えない心の傷となって残る。
幸せという言葉さえも 忘れかけていた。
怒りは収まらず、いつか爆発してしまうときがくるであろう。
そう思っていた。
でもそれが、こんなにも早くくるなんて、自分でも驚いた。
*
みんな敵。
ならば倒してしまおう。
そんな考え、間違っている。
そう思っていたって、こんな悪夢の中、冷静になんていられない。
”シネ ブス 消えろ 学校くんな”
そんな言葉がずっと書き綴られた教科書やノートを見るのにはもうあきた。
トイレの中で水をかけられたり、物をかくされたりするのも、あきた。
つまらない。
こんなことするヤツラはみんな敵。
敵は始末する。敵は倒す。敵には倍にしてやり返す。
あたしはもう、既に壊れていたのかもしれない―……
その日教室で髪の毛を燃やされた。
怒りは抑えきれず爆発する。
「・・・・、・・んでよ・・」
発したことばに敵は言う。
「なんか言ったぁ?ねえ”ジュリア”、こいつ声ちっちゃすぎて聞こえない〜」
「何にも言ってないと思うよ、だってこいつ今、口の中で泥食ってるし。」
”ライ”と”ジュリア”の目は、人のものだとは思えなかった。
私は、笑いながら泥をかけてくる敵に、必死に耐える。
だけど、もう既に私の中で、何かが壊れ始めていた。
「何がおもしろい。何が楽しい。お前等は敵だ。」
「は?何言って―……」
私が突然発した言葉に、敵は反応する。
私は怒りをぶつけるように、黒板に握り締めた手をたたきつける。
鈍い音と共に、少しへこんだ黒板。
敵は目を丸くして呆然とする。
周りにいた連中は、キャーッと騒いでいる。
「うるさい!黙ってよ!!!」
近くの机をガっと蹴る。
私の周りには敵だけ。
仲間などいない。
自分の為なら、誰にだって容赦はしない。
「何キレてんの?マジ死んでよっ」
”ライ”は、けらけらと笑う。
「死ぬのは”ライ”だよ」
私は、憎しみの笑みでそう言った。
そして次の瞬間、思い切り”ライ”を蹴った。
”ライ”は床に倒れた。
小さくまるまり痛がる”ライ”を見て、いい気味だと思う自分が怖い。
そんな私を押さえつけようとする”ジュリア”。
”ジュリア”は強い。
こんな私に恐怖しない。
だけどそれは間違いだよ。今の私を止めることなんてできないよ。
髪が燃えることによりすこし短くなってしまった自分の髪の毛を見て、思いついた。
「燃やしてあげる」
さっき髪の毛を燃やされたから、仕返しにね。
私は”ライ”の手から落ちたマッチを奪い取る。
そしてそれに火を付ける。
「やめ・・!!!」
”ジュリア”はさけぶ。
「ごめんっ、ごめんっ、止めてっ」
結局、自分かわいさに、弱くなるんだ。
止めない。復讐が終わるまでは、私の怒りが消えるまでは―……。
「そんな事して、ただで済むと思ってんの?」
”ライ”が言う。
「そっくりそのまま返すよ。」
私は、マッチをジュリアの髪に近づけた。
「ごめんなさいっ!お願いだから止めてっ!」
ジュリアが叫ぶ。
「"ごめんなさい"?!そんなの上辺だけじゃない!いつだって私を裏切ったじゃない!なのに今更何よ?」
教室中が静まりかえる。
「今までいじめられて、苦痛に耐えてきて、・・。でもそれも限界。」
弱音を吐く。
「だからここで今敵を倒すしかないの!!!!!!!」
叫ぶ。
”ライ”と”ジュリア”は私の顔を見上げる。
「もう止めてほしいの!!!ライもジュリアも大好きで、ずっと仲良くしたかった!!!!!!!」
そう、大好きなんだよ?
「でもかなわない!二人とも私のこと大嫌いなんでしょ?!」
叶わないことなら壊してしまおう。
「だからやり返す・・!!!もう耐えられないから・・!!!殺しちゃう前に・・壊れちゃう前に・・」
私はくるってるのかな?
何いってんのかわかんない。
「私を…誰か止めてよ…。殺してよ―………」
涙は頬をつたり流れた。
苦しい悪夢のロード。
もう終わりにしたい悪夢のロード。
長い長いロードを歩むのはもう終わりにしたい。
「できないよ―……」
”ライ”は口を開く。
「なんで?!今までずっといじめてたじゃん。簡単でしょ?!」
「そうだよ、そんなことできない。」
”ジュリア”も口を開く。
「!!!!!」
頭は真っ白。
もう何もかも終わりにしたいのに。
「大嫌いなワケない。大好きだよ。」
「そうだよ・・・友達でしょ?」
二人が言う。
優しい顔だった。
私の知っている、2人の笑顔だった。
でも私は信じられない。
信じたい。信じられない。信じたい―…。
本当は、怖かっただけ。
また裏切られることを恐怖して、何も寄せ付けないようにしたかっただけ。
本当に弱かったのは、私だった。
「友達なんてウソなんでしょ。本当は嫌いなくせに。」
首を横に振る二人。
「だってひどいことしてきたし、私だって今、こんなにひどいことをした。」
もう戻ることはない友情。
「ねえ、それで丁度いいんじゃないかな」
”ライ”が言う。
「そうだよ。あいこだよ。」
うん、とうなずきながら話す”ジュリア”。
「私、ヒドイことしてきて、本当にごめんなさい。これは誤って済むような簡単な事じゃないって分かってる。
でも、もう絶対にしない。どれだけ辛いのかって、ユメに教えてもらったから。」
”ライ”が久しぶりに私の名前を呼んでくれた。
少し心が温まった。
「私ね、ユメが羨ましかった。いつも仲がいいライと笑いあってる姿、羨ましくて仕方なかったんだよ」
思いもしなかったことばを、”ジュリア”は言った。
「だから、ライに裏切られて独りぼっちのユメを、放っておけなかった。」
”ジュリア”が私に話しかけてきてくれた理由。
初めて聞いた。
「なのに、ユメを裏切るような真似してごめんなさい。
私、不安だったの。いつかユメとライが仲直りしたら、私の居場所が無くなっちゃうかもって……」
不安―…。それは私と同じ感情だった。
”ジュリア”も不安だったんだ。裏切りを知っているから―……
「ね、あいこでしょ?」
”ライ”はいう。
「・・うん・・」
「だからさ、また前みたいにいっしょに笑いあおうよ。」
”ジュリア”もいう。
「うん・・・・・・」
涙を止まらない。
「仲直り―…だよ?」
”ライ”がいう。
「うん・・・・・!!!!!」
希望に満ちた笑顔
「痛・・・ッ!!!」
”ライ”が思い出したかのように私が蹴った場所に手をやる。
「ごめっ・・大丈夫???」
私はいう。
「保健室行こうか」
”ライ”がいう。
そだね、と顔を見合わせ、廊下を行く。
なんでこんなになったのといわれたときのための理由を考えながらゆく。
保健室に行くと、三人ともたいした大怪我ではなく、不思議なくらいに完治も早かった。
そして、三人は、今日も明日も笑いあった。
悪夢のロードから歩んで何ヶ月、私は無事に、幸せのロードへ来ることができました。
明日の笑顔に万歳!
三人の影は長く、笑ってた。
空は赤く、気付けば夕方。
ずっとしゃべっていたくなる。
三人は仲良しだから もう二度と離れはしない。
一生一緒。
そう誓った。
END
幸せのロード
2009/5/6 : 加筆修正