悪魔の涙

03

「悪魔……あんたもしかして……!」

「??」

机の上に置いてあった私のお菓子食べたなさては。
だってなくなってるもん。
でも今はそれどころじゃない……っ

「告白されたでしょ?!」

「ブハッ!!!!!」

悪魔は飲んでたお茶を一気に吐いた。

「汚い!何やってんのよ!バカ!!!」

怒る……というより、叱ってる感じ。

「だ……だって……天使……ちゃん……」

動揺してる悪魔が、目の前にいる。

私の魔法で無事だった悪魔が、今、このたった一言で、動揺している!!!

「女の子は感がいいの!か・ん・が・♥」

わざと語尾にハートを付けてみる。

いつもイジワルされるから仕返しよ!
今日はこっちからおちょくってやんだから。

悪魔の表情は、みるみるうちに赤くなっていく。

「あの……さ。」

悪魔は、重たい口を開く。
何を話す気?

「オレ、魔界で告白されたことあったんだ」

「へー。モテモテだったんだ?」

「まぁな!オレイケメンだから♪」

「ちょーしのんじゃね。」

お調子者の悪魔め。
テンション上がってきたかこの野郎!
ビシっとつっこむ私。
おかまいなしに悪魔は続ける。

「それでさ、オレ悪魔だから……」

「?」

「断った……というか、周りからみたらひでぇフリ方したんだよ。」

まじめな顔で話す悪魔。

「どんなフリ方?」

悪魔は一度私をじっと見つめる。
そして、斜め下にうつむいた。

「そいつが作ってきた弁当……目の前でゴミ箱に捨てた。」

「え……」


衝撃的な事実だった。
まぁ、そりゃぁ悪魔だもん。

それくらい言われる覚悟はできてた。

できてた……
ハズだったのに……

なぜか心がチクンと痛んだ。

なぜなの?
何か知っている……
私は……

でも……

思い出さないようにしている私がいる。

悪魔との生活……
絶対最悪に決まってる。

思い出したくない過去。
振り返ることのない過去。
だから思い出さないようにしている。

一体なんなの?
何があったっていうの?


「今考えたらひでぇよな。でもそのときはぜんぜん平気だった。なんでだろーな。」

悪魔は苦笑いしている。
私は……とっさにこういった。

「悪魔が……天使の心を思い出してきているからじゃない?」
「え……どういうこと……???」

思わず言ってしまった。
でも……絶対そうだ。

「だから……つまり……。悪魔はなんらかの事情で、本当は優しかったのに、突然悪魔になっちゃって……」

「うん…………」

「それで、ひどいことをするようになった。でも、天使の心を思い出してきているから……」

「うん…………」

「だから今はひどいことしたなって思えるんじゃないの?」

「うん…………………」

悪魔はうつむきながら、なんども”うん”とうなずいた。

そのとき見えた、前髪の間からみえたしずくのこと、私知ってるよ?

悪魔は初めて私の前で泣いた日。

ちょっと心が近づけた感じがして、うれしかったよ。


ねぇ、悪魔。

絶対に思い出すよね。

全部全部、思い出すよね。

天使の心、優しい心、思い出すよね。


悪魔の過去は知らない。

でも、知ってるような気がするの。

なんでだろうね。



不思議な気持ちのまま、わたしたちは眠りについた。


03エンド
2009/5/6 : 加筆修正