運命はいつだって、そこにあった
「悪魔……あんたもしかして……!」
「??」
机の上に置いてあった私のお菓子食べたなさては。
だってなくなってるもん。
でも今はそれどころじゃない……っ
「告白されたでしょ?!」
「ブハッ!!!!!」
悪魔は飲んでたお茶を一気に吐いた。
「汚い!何やってんのよ!バカ!!!」
怒る……というより、叱ってる感じ。
「だ……だって……天使……ちゃん……」
動揺してる悪魔が、目の前にいる。
私の魔法で無事だった悪魔が、今、このたった一言で、動揺している!!!
「女の子は感がいいの!か・ん・が・♥」
わざと語尾にハートを付けてみる。
いつもイジワルされるから仕返しよ!
今日はこっちからおちょくってやんだから。
悪魔の表情は、みるみるうちに赤くなっていく。
「あの……さ。」
悪魔は、重たい口を開く。
何を話す気?
「オレ、魔界で告白されたことあったんだ」
「へー。モテモテだったんだ?」
「まぁな!オレイケメンだから♪」
「ちょーしのんじゃね。」
お調子者の悪魔め。
テンション上がってきたかこの野郎!
ビシっとつっこむ私。
おかまいなしに悪魔は続ける。
「それでさ、オレ悪魔だから……」
「?」
「断った……というか、周りからみたらひでぇフリ方したんだよ。」
まじめな顔で話す悪魔。
「どんなフリ方?」
悪魔は一度私をじっと見つめる。
そして、斜め下にうつむいた。
「そいつが作ってきた弁当……目の前でゴミ箱に捨てた。」
「え……」
衝撃的な事実だった。
まぁ、そりゃぁ悪魔だもん。
それくらい言われる覚悟はできてた。
できてた……
ハズだったのに……
なぜか心がチクンと痛んだ。
なぜなの?
何か知っている……
私は……
でも……
思い出さないようにしている私がいる。
悪魔との生活……
絶対最悪に決まってる。
思い出したくない過去。
振り返ることのない過去。
だから思い出さないようにしている。
一体なんなの?
何があったっていうの?
「今考えたらひでぇよな。でもそのときはぜんぜん平気だった。なんでだろーな。」
悪魔は苦笑いしている。
私は……とっさにこういった。
「悪魔が……天使の心を思い出してきているからじゃない?」
「え……どういうこと……???」
思わず言ってしまった。
でも……絶対そうだ。
「だから……つまり……。悪魔はなんらかの事情で、本当は優しかったのに、突然悪魔になっちゃって……」
「うん…………」
「それで、ひどいことをするようになった。でも、天使の心を思い出してきているから……」
「うん…………」
「だから今はひどいことしたなって思えるんじゃないの?」
「うん…………………」
悪魔はうつむきながら、なんども”うん”とうなずいた。
そのとき見えた、前髪の間からみえたしずくのこと、私知ってるよ?
悪魔は初めて私の前で泣いた日。
ちょっと心が近づけた感じがして、うれしかったよ。
ねぇ、悪魔。
絶対に思い出すよね。
全部全部、思い出すよね。
天使の心、優しい心、思い出すよね。
悪魔の過去は知らない。
でも、知ってるような気がするの。
なんでだろうね。
不思議な気持ちのまま、わたしたちは眠りについた。
03エンド
2009/5/6 : 加筆修正