運命はいつだって、そこにあった
抱きしめられている事に、少しの心地よさを感じるようなった頃。
「……テン」
リアは私の名前を、初めて呼んでくれた。
嬉しくて嬉しくて、また泣いてしまいそうになった。
でも、ここで泣いたらまたリアが心配するだろうから、必死に堪えた。
あれ?私はリアが嫌いなのに、どうして”心配するだろうから”なんて事、心配してるんだろう。
「よく聞いて。これから言うことは、全て本当のことであり、事実だから。」
リアの声で、思考回路が吹っ飛ぶ。
急に低く大人っぽい口調に変わった。
「え・・ぅっ・・なに?」
私は涙の跡を拭いて、リアの顔を見上げる。
「オレ、今思い出したんだ。」
リアはそっと抱いていた手を放す。
「オレは―……」
涙はすっかりでなくなり、私は話を聞き終わった後
はっきり言って、とても耳を疑った。
「変な冗談止めて。そんな事、あるはずがないでしょ?」
信用できなかった。
リアの話に信用できなかった。
ううん―……
信用したくなかったの。
だって、リアとディアが……
「冗談じゃないんだ。本当……なんだ。」
「嫌よ!止めて!!嘘つき!そうよ貴方悪魔だったわ、きっと質の悪い冗談!そうなんでしょ!?ねえ!!」
私の中の、全ての記憶が、リアの言った真実を否定する。
「ごめん―……テン。嘘なんかじゃないんだ。信じて。」
「そんなっ―……事って―……」
がくりと腰が抜けて、私は床にへたれこむ。
「オレが、"ディア"なんだ」
低く、低く、乾いた空気を揺さぶった。
03エンド
2009/5/6 : 加筆修正