運命はいつだって、そこにあった
結局一睡もできないまま、朝を迎えた。
「おっはよーン♪天使ちゃん♪」
朝からハイテンションな悪魔……リア。
私は横目でちらりと睨み……
「ぁーぁー。おはよーょぉ。」
いやいや挨拶をする。
ぜんぜん寝てないから、眠たさ100%だし。
「あれー。天使ちゃん、元気ないねー。どーしたの?」
お前のせいだ!!!!!
全く。
にぶすぎ!
とか思いつつ、朝ごはんを作るため、キッチンへ向かおうとした。
パシッ
「っ……」
キッチンに向かおうとすると、リアが私の腕をつかんできた。
「放してよ、朝ごはん作れないじゃんか」
振り払おうとした。
でも、力が強すぎて離れない。
仕方がないからおとなしくじっとしてると、リアが口を開いた。
「しんどいのにムリして料理すんな!」
え……。
ちょっと意外。
そんなこというなんて。
昨日は"天使の心を思い出さない"とか宣言してたから、
てっきりもう心配なんて(というか今までそんなことなかったけど)しないと思ってた。
「じゃぁ誰が料理すんのよ?」
冷たく返事をする。
だって、リアのこと嫌いだもん。
昔は好きだったけど、今は嫌い。
昔みたいに、優しい姿は見えない。
だから……嫌いなはず。
いつのまにか私は、心の中で、嫌いだと唱えていた。
部屋の中に沈黙が流れる。
そして、リアは言った。
「オレが作るし!」
リアが?
「料理作れるの?」
「……」
リアは黙り込んでしまった。
だが、すぐにリアはその重たい口を開いた。
「作れー……」
「作れ?」
リアは私の表情をうかがいながら、
「作れないっ!」
と叫んだ。
「何ソレっ!」
思わず笑ってしまった。
「笑うことないだろー!」
リアはちょっと起こり気味。
「だって……!できないなら最初からそういいなよぉ!ははっ!」
笑いが止まらない。
「……うっそっだよーーーん!!!!!!!」
「えっ」
とたんに笑いは止まった。
「このオレ様が料理を作れないわけがない!!!!!」
いや、"様"をつける意味わかんないんすけど。
「本当は料理できるのになんでそんな嘘つく理由があったの?」
「天使ちゃん……、昨日オレが変なこといったせいで元気ないっぽかったから……」
気付いてたの?
「だから笑ってほしかったんだよ!」
わたしのために?
嘘を?
優しいね。
なんだろこの気持ち。
嬉しいよ。
嫌いなのに……。
嬉しいよ……。
「っぅ……」
「て……っ天使ちゃん?!」
「っぇ?」
「なんで泣いてんの?!」
あ……。
いつのまにか涙が出てた。
「わわわわッご…ごめっ……オレ、なんか変なこと言った?!」
言ったよ!
悪魔のクセになんでそんなに優しいのよ!!!
「っぅ……ぅえ〜んっ」
「ぁわゎわゎゎゎゎっ!!!どーしよっどーしよっ」
さらに泣きが増す私をみて、明らかに焦っているリア。
ごめんね。
涙が止まらないの。
だって貴方が優しいから。
昔みたいに、優しいから。
涙が止まらないの―……。
「天使ちゃん……」
フワっ……
―……何……―???
暖かい。
「天使ちゃん……」
耳元で声が聞こえる。
目を開けると、リアの服。
抱きしめられてる?
違う。
抱きしめてくれてるんだね。
「うぅ……っ……なんでそんなに優しいのよ!!!!!!!リアのバカ!!!!!」
泣き叫んだ。
リアは優しく、指で涙をすくい取ってくれた。
まるで恋人同士みたいだね。
リアは悪魔なのにね。
なんでそんなに優しいんだろう―……。
02エンド
2009/5/6 : 加筆修正