その日から、平凡な日常と引き換えに、非日常な毎日がやってきた。
しかし鬼は、そんな簡単に心を入れ替えるような奴ではありません。
本物のおじいさんは、もう既に狼に喰われ死んでいました。
と、いうことは。
おばあさんの前に現れ、帰ってきたおじいさんは、鬼が外見だけを真似た、コピー人間だったのです。
おばあさんはそれには気がつかず、やがて寿命で命を絶ちました。
安らかに眠るその姿は、まるで鬼の術が掛かった時の動物の姿のようでした。
おばあさんは、命絶つまでおじいさんが鬼だとは疑いませんでした。
それに、鬼の悪さの噂が、ぴたっとやんだことで、更生したのだと信じきっていたのです。
おばあさんの死後、おじいさんの姿をしていた鬼は、ようやく本来の姿に戻りました。
そして、あの日桃から生まれた少女の元へ、一目散に駆け出しました。
おじいさんになったのも、おばあさんを安楽死させたのも、すべては計画通り……
―……鬼の目的は、あの時逃げた少女、なのでした。
03 -end-
2009/5/14 : 加筆修正