0Life : プロローグ

02

その時代、鬼は人のものを盗み島に持ち帰っては、何かと悪さをしていた悪魔のような動物でした。
そして、狼は動物の中でもっとも恐れられていて、出会ってしまったら、命はもう無い、と言われていました。
そんな狼に襲われたおじいさんを、鬼は勇敢にも救い出したのです。
「もうすぐ鬼は、この家に来て、おじいさんを返してくれます。」
少女が言った後、すぐに家の扉をたたく音が聞こえました。
おばあさんは、驚いた様子でこういいました。
「あんた、未来が見えるのかい?おじいさんが、本当に鬼に連れられて帰ってきた!」
おばあさんは嬉しげにそういいました。
そして少女の能力に、どこか興奮気味でした。
「では私はこれで。」
少女はそう告げ、扉とは反対方向―……つまり、窓のある方へと歩き出しました。
おばあさんは、「もう行くのかい?止まっていきなされ」といいましたが、少女は軽く御辞儀をしただけで、すたこらさっさと無言で窓から外へ出て、走り去っていきました。
おばあさんは、少し残念そうでしたが、おじいさんが帰ってきた事を思い出し、扉を開けました。
「おじいさんや、無事だったのかい。」
おじいさんは、目に涙を浮かべ、おばあさんの手を握りました。
「ああそうじゃ。狼から鬼が助けてくれたんじゃ。」
おじいさんの隣には、もう鬼はいませんでした。
「ああ、ああ。鬼も心を入れ替えたのじゃな」
おばあさんは先ほどの少女の話を信じていたので、鬼はいいヤツだと、少し思いはじめていたのでした。


02 -end-
2009/5/14 : 加筆修正