××の恋

]T形を変えたリズム

「ビート」

リズミの声が静かに、重く圧し掛かる。
ドールと呼ばれた女は、かすかに顔をゆがめた。

「本当に辛いのは、これから」

ドールは今度は確かに綺麗な顔を崩すと、突如襲った痛みに、うなり声を上げる。

「っ……仕方ないですね。皆、戦いに参加しなさい」

ドールは顔を上げると、指をぱちんと鳴らした。
すると、草むらからここぞとばかりにたくさんの黒服が姿を現した。

みな、"黒恋団"の仲間だった。
テェルを慕い、いつも着いて回っていた仲間たちが、たった1つの裏切りで、こうも変わってしまうものなのか。

いや、たった1つではなかったのだ。
テェルによって、仲間は全てを裏切られたのだ。

尊敬、信頼、思い出、絆。
今まで創り上げてきたもの全てを裏切った。

テェルはそこまで考えていなかったようだけど。



ティンカはただ、戦う兄と、りずみを見ている事しかできなかった。
そんな自分が情けなくて、嫌気が差した。

ティンカは決めた。
見ているだけじゃ、何も始まらない、と。

恋だって戦だって、全てのハジマリを作ったのは"僕"だ。
ならばそれを終わらすのも。

ティンカの恋は、強かった。

「ハジマリを創ったのが僕なら、オワリを創るのも僕だ。」

そう呟いたティンカは、どこかいつもとは違う雰囲気をかもし出していた。
テェルは、そうなる事を予想していたかのように、軽く笑みを浮かべると、攻撃をぴたりと止めた。

リズミとイクも気が付いたようで、前へと走るティンカを止めない。


敵へと前進する。
この恋を、実らせるために。


]Tエンド
2009/5/6 : 加筆修正