心を閉ざしてしまった女の子のぬいぐるみの恋

\僕の幻

僕はその時、華夜ちゃんと一緒に遊んでいた。
真衣ちゃんは、どうなったのだろう。
真衣ちゃん、大丈夫かな……。

不安で不安で、仕方がなかった。

「くまさん、あのお姉ちゃんのところに帰りたい?」

華夜ちゃんが突然、そんな事を言い出した。

ううん、僕は華夜ちゃんのところにずっといるよ。
じゃなきゃ、華夜ちゃんは1人になっちゃう。

「華夜ちゃんね、本当は華夜ちゃんじゃないの。」

―……え?

「幻なの。真衣ちゃんの過去の。」

華夜ちゃんは、知らないはずの名前を、知っていたかのように発した。

まぼろし……?
僕はずっと幻と一緒にいたってこと?

こくり。

だけど、ぎゅうってしてくれたよね?
あの時のぬくもりはなんだったの?

「さようなら、くまさん。」

待って、華夜ちゃん!
じゃあ、両親は?あれも幻?

「真衣ちゃんのところへ、早く行ってあげて。」

華夜ちゃん……!?

「未来の"わたし"が待ってる。」

?!

華夜ちゃんはそう言うと、光の粒となって消えてしまった。

もちろん家具も、部屋も、家も。

ただの草原に、拾われたぬいぐるみと僕は寄り添うようにして寝転がっていた。


\エンド
2009/5/6 : 加筆修正