心を閉ざしてしまった女の子のぬいぐるみの恋

[本当は

「イク!このぬいぐるみの元所持者の場所、分かる?!」

リズミは物凄いスピードで走っていた。

「ん―……と。あ、わかったわかった。すぐこの先の川の裏にある大きな家。"型稿"っていう人の家」

マイクの名前は、どうやらイクというらしい。

「OK!!ありがと!」

リズミはその家へと猛スピードで向かった。


型稿家の一角にある部屋。
そこは、ぬいぐるみだけで埋め尽くされた真衣の部屋だった。

「どうして中学生になったら、ぬいぐるみと遊んじゃいけないの……」

ぬいぐるみに埋もれてぽそぽそと呟く声。

「お母さん……お父さん……私の事避けないでよ……」

それは、華夜と重なる家族関係だった。

「誰か……私を助けて……」

真衣がそう涙を流しながら言うと、ぬいぐるみが全て壁に寄り、その真ん中に同い年ほどの女のコが立っていた。

「あたしは"リズミ"。貴方を助けに来た。」

リズミがそう言うと、真衣は涙を流したまま、希望に満ちた笑みを浮かべた。

「助けてくれるのね?!この地獄から、救ってくれるのね?!」

リズミにすがりつく真衣。

「うん。貴方の親に貴方の想いを伝えてね。」

リズミが言うと、真衣は「え……?」と疑問の顔をした。

「あたしは人の想いを伝えてしか人を救うことができない。だから、あなたの想いを伝える。」

「私の想いって……?」

「あなたの今の辛さ、悲しさ、求めているモノを。」

「……伝えると助かるのね?」

「うん。但し、伝えてしまうと、あなたはその想いを忘れてしまう。」

「こんな想い、忘れてしまったほうがいいの!だから、早く!!」

「わかった。じゃあ、とりあえず……父母と会って。」

真衣は、了解し、部屋から出て、居間へとやってきた。

「お母さん……お父さん……」

真衣がそう言うが、両親はまるで相手にしてくれない。

「う……ッう……」

真衣はうつむき、泣きそうになるのをじっと堪える。

その時、リズミが真衣の頭を手でぽん、と撫でた。
真衣が顔を上げるとリズミはこういった。

「大丈夫。今から想いを伝えるから。」


リズミはマイクをにぎりしめ、歌い始めた。


「毎日孤独で―……独りぼっち…、ずっと泣いてた…隠れて泣いてた……、辿りついたのは……ぬいぐるみ……絶対に離れていかない・・・大切なモノになっていったの―…………」


真衣の気持ちを、唄っていた。


歌が部屋中に響き、両親が強く光ったと思うと、真衣はフッと意識が飛び、倒れてしまった。

その時確かに聞こえた両親の声。

真衣、ごめんね……ずっと独りぼっちにして、ごめんね……

とても嬉しかったよ。


[エンド
2009/5/6 : 加筆修正