今宵、貴方は愛に満たされる
少々曇っている今日この頃、このオウチの屋根の上に、中学生くらいの女のコが立っていた。
「愛情のない親子…、か……」
その子の言葉に反応する声。
「きっと黒恋団の仕業でしょう。」
その声は、女のコの持つマイクから放たれているらしい。
「うん。早くあの親、どうにかしないと、子どもが危ない。」
「一刻も早く救わなければ、親子関係は闇の中へと葬られてしまうわ」
「わかってる。だからこうして今、親が出てくるのを待ち伏せてる。」
マイクとしゃべる女のコの名前は……"リズミ"。
「〜で……そう……う……!え……そ……?」
扉の開く音。
そこから二人の若い男女が現れた。
「出てきた……!」
リズミは屋根からぴょん、と二人の前へと飛び降りた。
「な……何だ、君は!」
「そうよ、いきなり出てきたら危ないじゃない!」
二人は驚いた様子で、リズミを見ている。
「貴方達に聞きたいことが。」
リズミは冷静にしゃべる。
「昔、真っ黒なドレスを着た背の高い女の人に出会いませんでしたか?」
リズミが聞くと、二人は顔を見合わせて、ああ!、と頷いた。
「その時、何か願い事をしませんでしたか?」
「ん……と……」
二人はしばらく考えたが、「ごめんなさい、覚えてないわ。」と言った。
「分かりました。質問に答えてくださりありがとうございました。」
リズミは軽くお辞儀を済ますと、すばやい動きで家の中へと姿を消した。
それは、とても早かったので、二人は消えたと思い、しばらくその話題で盛り上がっていました。
「それで、華夜ちゃんは……」
いた!
「羽月華夜ちゃん……だよね?」
リズミは華夜ちゃんと目線を合わせる。
「うん。華夜ちゃんだよ。今ね、くまさんと遊んでたの。お姉ちゃんは誰?」
くまさん……?ああ……。
大事そうに抱えているそのぬいぐるみの事・・・。
「お姉ちゃんは、"リズミ"っていうの。黒恋団っていう悪い人達から、人々を守る仕事をしてる。」
リズミがそう言うと、華夜はにっこりとした。
「リズミお姉ちゃんはヒーローなの?!すごいすごーい!!」
子どもの笑顔って、無邪気だけど
この子は何かが違う。
リズミがそう思ったその時だった。
「悪い人から守ってくれるのなら、ぬいぐるみをくれたお姉ちゃんを守ってほしいなー」
華夜ちゃんは、そんな事を言い出した。
「ぬいぐるみをくれた、お姉ちゃん?どんな人なの??」
「えっとね……この前川の近くでお姉ちゃんは男の子達に、ぬいぐるみを川に投げられたの。華夜ちゃんが拾って、お姉ちゃんに渡しに行ったら、お姉ちゃんは華夜ちゃんにくれたの。」
華夜ちゃんは、その時もらったぬいぐるみを箱のなかから取り出した。
「華夜ちゃん、これ、ちょっと借りていってもいいかな?」
「いいよ!その代わり、ちゃんと守ってあげてね」
リズミは強く頷いた。
Zエンド
2009/5/6 : 加筆修正