お嬢様の猫の恋

[恋心に惑わされて

僕は、リズミちゃんからすべてのことを聞いた。
僕の恋心だけ奪って、僕の願いは叶わなかったワケ。

黒恋団という悪の組織に、騙された僕は、もう結菜ちゃんを好きではない。

「リズミちゃん……僕ッどうしよう―……」

結菜ちゃんと笑い合っていた、あの幸せな日々は、もう戻ることはないのかな?

「キミは自分のキモチの大きさに負けたんだ。」

僕は僕のキモチに負けた―……?
そうだ。あまりに大きい恋心に、僕は負けた。
だから結菜ちゃんに伝える事を、自分でせず、あんな人に頼んでしまったんだ。

僕の過ち。
もう過去を振り返ることしかできなくなった僕のキモチ。
好きだった頃の思い出が、目の前で現れては、消える。

「僕……人間になったら、いいことばかりだと思ってた。だけど、現実は辛いよ。」

独り言のように言った。
それを、リズミちゃんが冷たい口調で返してきた。

「キミは今、恋心がないんでしょ?だったら、辛いなんてありえない。」

ありえない。
心に突き刺さる。

辛い……辛い……辛い…………

結菜ちゃんが恋しい。
あの時の思い出が愛しい。

猫だった僕に、戻りたい。


「辛いよ……!!だって僕は……!」


そこでコトバが詰まった。
はっと気づいたから。

何を言おうとしてた?

―……あぁ、そうか。
僕はまだ―……


「僕はまだ結菜ちゃんのことがが、大好きなんだもん!!!」

"だから辛いんだよ"

力強く言った。

するとリズミちゃんは、にっこりと微笑んだ。

「だったら大丈夫。キミはこれからもずっと、その恋心を失うことはない。」

失わない。
もう一度生まれたこの恋心は、きっと一生消えない想い。

大好きな、結菜ちゃんへの、恋心。


[エンド
2009/5/6 : 加筆修正