今宵、貴方は愛に満たされる
その時の僕は、どうかしてたんだ。
そんなの、絶対におかしいのに。
"想い"を伝える為に、どうして"想い"が必要なのか。
聞きもせずに決めてしまった、僕が・・・悪い。
「うーん……」
気が付くと、僕はベットに寝ていた。
よくみると、そこは結菜ちゃんの部屋だった。
コンコン、と、ドアをノックする音が聞こえた。
「ミィくん?起きたかな。」
入ってきたのは、昨日とは違う服を着た、結菜ちゃんだった。
「結菜……ちゃん?」
結菜ちゃんの隣には、ぜんぜん知らない男の子。
……彼氏?
でも僕には関係ない。結菜ちゃんなんて。
どうして僕は、結菜ちゃんの事好きだったんだろう。
わからない。
どこが好きだったのか、どういう風に好きだったのか。
「キミはもう、おうちに帰ってね。あたしはこれから、本命のこの人と一緒に過ごすから……」
結菜ちゃん―……?
本命って、どういうこと?
……もしかして、結菜ちゃんも、てっちゃんと同じ……?
僕は、小さな脳ミソをフル回転させて、結論付けた。
結菜ちゃんも、大宮哲も、どっちも本命がいながら、付き合ってた……。
それも、結婚話までして。
エゲツナイ。何も知らずに、ただ純粋に、二人が幸せなら、結ばれてほしいと想った。
だけど……。僕だけだったんだ。
そんな"幸せ"を、勝手に思い描いていたのは。
所詮現実なんてそんなモノなの?
僕は、この姿で、一生を過ごさなきゃいけない。
結菜ちゃんのために……結菜ちゃんのためにこの姿になったのに……!!!
そう思い始めると、もう止まらない。
僕は、猛烈に腹が立った。
姿が猫なら、今すぐこの爪で引っかいてやりたいくらい。
結菜ちゃん。
僕はもう、結菜ちゃんのこと、なんとも思ってない。
どうにでもなっちゃえばいい。
これ以上、嫌な気分になりたくない。
僕は、部屋を出て行こうと、立ち上がった。
そして、結菜ちゃんの隣を通り抜ける。
「痛!!!」
僕が通った瞬間、結菜ちゃんは、叫んだ。
「ど……どうしたの?!」
僕は思わず振り返ってしまった。
そして、ハッと息を呑んだ。
「リズ……ミ……ちゃん……」
そこには、結菜ちゃんのおでこに、デコピンをした、リズミちゃんの姿があった。
そして、僕の方によってきて、おでこに指を当てると、思いっきりデコピンをした。
「いったぁッ!」
これは痛い。
最強……。
僕がそんなことを考えていると、リズミちゃんは、とても低く重たい口調でこういった。
「キミの犯した過去の罪は、一生消えない」
僕は、厳しい表情をするリズミちゃんと、おでこをさすって痛さを紛らそうとしている結菜ちゃんを交互に見た。
そして、自分のしてしまった、償えるわけのない過ちを、改めて理解したのだった。
Zエンド
2009/5/6 : 加筆修正