今宵、貴方は愛に満たされる
あれから一週間。
12月17日。
あと一週間で、結菜ちゃんの結婚式がある。
ママさんにはもう許可をいただいたらしい。
てっちゃんの両親は……旅行中でいなかったらしい。
てっちゃんは自分の親が旅行に行ってる事、知らなかったのかな……
ちょっと不思議に想った。
ある日、てっちゃんが家に来た。
仲良く結菜ちゃんと話している。
僕は結菜ちゃんの膝の上で、うとうとし始めていた。
けど、聞いてしまったのだ。
『♪〜』
「―……ごめん!ちょっと携帯鳴ってるから、待ってて!」
僕はナゼだか心に違和感を感じた。
なんだかてっちゃんが隠し事をしているようで……追いかけて、こっそり聞いた。
「〜……順調……も……楽し……ら………」
良く聞こえない。
もう少し、近くによろう。
そして僕は、てっちゃんの会話を聞いてしまったのだ。
てっちゃんは―……
最低だという事を、知ってしまったのだ。
僕は急いでそのことを結菜ちゃんに伝えようとして、その場で鳴いた。
「みゃぁ!!!」
するとてっちゃんは、僕をにらみつけ、「チッ」と小さく舌打ちし、そのままどこかへ去ってしまった。
「ミィ?」
「みゃあ!」
「どしたの……あれ?てっちゃんは?」
「みゃぁみゃぁ!!」
僕は、鳴いて伝えようとした。
「ミィ!てっちゃんに何したの!!?」
え……
「みゃ……?」
「てっちゃん、ミィのせいで帰っちゃった!怒っちゃった!だって……だって……」
うわーんと、結菜ちゃんは泣き出してしまった。
僕は結菜ちゃんを舐めてなだめようとした。
「にゃあ……」
―…コトン…―
「みゃ?」
結菜ちゃんの手から落ちたのは、携帯電話。
そして、画面に映っているのは……
"ぶりっこ。きもい。死んで?どうせ莫大な金額、保険にかけてるんだろ?"
―……ひどい!
てっちゃんは……てっちゃんは!
あの携帯電話で話していたてっちゃんの会話は―……
お金目当てで近づいた、というものだった。
最初からスキでも何でもない。
ただお金がほしかっただけ―……。
そしてお金が入った暁には、友人らと分け合いっこしようという。
そんな会話、僕だって聞きたくなかったな。
―……復讐しなきゃ。
そう思った。
僕がしっかりしないと、結菜ちゃんを守れない。
「みゃぁ!」
"僕に任せて!"
そういうように、僕は元気良く鳴いた。
「ミィなんて嫌い!」
え?
結菜ちゃん?
なんで……
あぁ、そうか。
僕は猫。
たとえ僕が結菜ちゃんの言葉を分かっても
結菜ちゃんは僕の言葉をわからない。
つらい。
通じる事のない会話の中で
やっぱり結菜ちゃんは猫なんて……
神様。
いるなら僕を、人間にしてください。
結菜ちゃんに言葉が通じる、人間に。
Vエンド
2009/5/6 : 加筆修正