小さな小さなタンポポの恋

Zタンポポにささげる唄

次の夜、”リズミ”がいったとおり、”黒恋団”と思われる女の人が
あの子の目の前に現れた。

僕の目の前には、姿を消している”リズミ”がいる。
姿を消す理由は、”黒恋団”にばれないためらしい。

 「あ!!!」

僕は思わずさけんでしまった。

あの子は…僕の好きなタンポポのあの子は……


    ”黒恋団”の力によって、今まさに”恋心”を奪われそうになっている。
 
 「リズミ!!!」

僕は”リズミ”の名を呼び助けを求めた。

 「落ち着いて。今から助けるから」

 ”リズミ”は冷静に、静かに言った。
 
真夜中、花屋の一角、コンクリートと壁の間で綺麗に咲いているタンポポから
まぶしく目をそらしそうになるくらいの光が放たれた。

僕はただ見ていることしかできない無意味なタンポポでしかなくて、ごめん。
何もできない僕……
だからせめて、僕の想いを使って、君を助けるよ。

僕に”リズミ”は手をかざし、どんどん想いを吸い取っていった。
僕の想いがどんどんとなくなっていくのが分かる。
でも、あの子を助けたいという気持ちはなくならない。

僕は小さく光り、”リズミ”は夜空に浮き、そして月に向かって―……

       歌い出した。

これは、タンポポがタンポポにささげた想いの唄だった。


 「〜……―僕はあの子が好きだった。だから今ここでささげよう。この想いを―……〜」


”リズミ”が歌い終わると同時に、僕は意識を失った。
覚えているのは、”リズミ”と澄み切った美しい歌声と、夜空に輝く無数の星たちが笑った姿。
そして、あの子が大きく強く輝いたこと―……


Zエンド
2009/5/6 : 加筆修正