今宵、貴方は愛に満たされる
「貴方の想い、届けましょうか?タンポポさん。」
そんな言葉をくれたのは、真っ黒なドレスに身を飾った、背の高い女の人でした。
妙に引きつって笑っているその顔は、少し不気味で―……
月がバックにあるこの夜空のした、その姿はいっそう不気味に思えました。
「貴方は誰……????って言っても……。通じないよね………。」
タンポポは、少しの期待すらも、しなくなっていました。
「通じるわ。貴方の言葉も、想いも。」
「え???」
タンポポは驚いた。
言葉も想いも分かっちゃうすごい人が、この世には存在するなんて。
「タンポポさん。どうしますか?今なら、私の力で、貴方の想いを彼に伝えることができます。」
「そんなことが…できるの?」
「ええ。ただし、想いを伝える代わりに、失うものが一つあるわ。」
「失う……、もの……???」
「そう。失うもの。それは、今のあなたの恋の気持ち―……。」
「え……。」
戸惑うタンポポに、その女はようしゃなく話し続けます。
「あなたの想いを伝えれば、つらくなくなる。もうこんな想いしなくてすむ。
でも、伝えてまたつらくなる恋の気持ちなんか、いらないでしょう?
だから、消してしまうの。そのときに。」
タンポポは悩みました。
恋の心が消えてしまう?
タンポポは、流石にそんなの嫌だと想いました。
でも……。
想いを彼に伝えたかった。
タンポポの答えは一つ。
「想いを届けて……」
女は不気味に笑いました。
Wエンド
2009/5/6 : 加筆修正