怨鏡(おんきょう)

01

「アハハハハッ」
「それって本当〜?!」
「マジキモイんですけど!」


―…あ!


羅緒(らお)!おはよう……」

何の知らせもなく

「それでさ〜!!!」
「超ウケルし!!!」


それはやってくる


「ま……待って!羅緒!!!」

手を伸ばしても

"パシンッ"

「うざいなぁ……もう。触んないでよ。」

痛いだけ。

「何で………避けないでよ。」

企みの笑顔で

「羅緒の嫌いなモノ、知ってるよね。」

キミは言う。


「……汚い人と………しつこい人」

震える声で、汗ばむ拳を強く強く、握る

「だーいせーいかーい♪」


天使のような、明るく可愛らしい微笑み


「でもね、羅緒、今もう一つ嫌いなモノ、増えたんだ〜」


キミはまるで、地に埋もれたゴミを見る目で言う


「あんただよ」

冷たく恐ろしく
見下すキミの視線の先
あたしの表情を伺っている


「あんたなんか、もういらない」


この、真っ黒でドロドロした気持ちはなんだろう
モヤモヤとして、何かをしないと気がすまないようなこの気分

落ち着くために
いつも持ってる手鏡に
自分の姿を映した

―…昔から変わらない、安心の仕方
この鏡さえあれば大丈夫
だってこれは……母の形見だもの

これに映るあたしの姿
ちっとも惨めなんかじゃない
それを確かめた後
ふと考えた


きっとキミを鏡に映せば
悪魔のような本当の自分が見えてくるよ

………ねぇ
キミも見てみようよ

何も偽らない
本当の
惨めで残酷な自分の姿を


怨鏡エンド
2009/5/6 : 加筆修正