小さな小さなタンポポの恋

Uタンポポの初恋

そのタンポポは
花屋の一角にあるコンクリートと壁の間に小さく咲いた
根性強い雑草でした。

人にどんなに踏みつけられても
火のついたままのタバコを捨てられて燃えそうになっても
決して枯れない
強い強い雑草でした。

そのタンポポは、ある日こんな感情を覚えました。
 
心が、とくん とくん とくん となって、切ない気分になったのです。

その感情は、”恋”だと、たまたま通った学生の話で分かりました。
タンポポは、恋をしたのです。

タンポポの恋の相手は、踏まれてへな、となってしまった自分の体を
大丈夫か、といいながら、照れくさそうに起こしてくれた
バイク乗りのバイトの新聞配達さんです。

日があたらないと元気がでないタンポポは
夜の間に踏まれてしまって
自分では起きられない状態でした。

それを、その人は、助けてくれたのです。
嬉しかった。
感謝した。
でも、……。

相手は人間。
タンポポのいうことなんて聞こえない。
”ありがとう”っていえない。

そのことを、すごくすごく、悔んだ。

       タンポポであることを―……       後悔した。


02エンド
2009/5/6 : 加筆修正