運命はいつだって、そこにあった
「おはよー。天使ちゃん♪」
朝からハイテンションな悪魔についてけない。
私は無視する。
「ねー。無視すんのは慣れたけどさぁー。」
何を言うつもりだこの悪魔は。
「なんでオレのぶんの朝ご飯ないのぉーーーーう!!!!!」
もうお腹すいてガマンできないとばかりに叫ぶ悪魔が目の前にいる。
「あんたのぶんのご飯なんて用意してないもん。」
サラっと言う。
悪魔は目を丸くして、私を見てる。
何よ、私は人間の世界の食事食べれるけど、悪魔は無理でしょ。
だから作ってないんじゃん。
言いたかったけど、言わなかった。
「むー。んじゃ天使ちゃんのご飯もらうーーー!」
「はぁ?!無理無理無理!!!!私のぶんなくなっちゃ……」
言い終わらないうちに悪魔は私のご飯をがつがつと、一気に食べてしまった。
私のご飯が……。
ていうか、それより……。
食べれるんだ……。
「おいしっ!!!」
本当においしそうな顔して食べるナァ……。
今度から作ってやろうかな……。
いやいや、悪魔にそんなことしたら!!
絶対だめだめ!!!
「天使ちゃん、料理ウマイじゃん!」
!!!!
一瞬、照れた。
そんなこといわれたの、何年ぶりだろう。
ディアとはなれてから自分で作って自分しか食べてなかったから…………
三年ぶりだ。
「天使ちゃん今照れたーーー!!!」
うっ……。ばれてた…………
「照れてないし!」
「顔に書いてあるよーーーん♪」
「うそ……!」
あわてて鏡を見る……
何も書いてない。
悪魔のことだから、てっきり魔法でも使ったのかと……
「ばーーか!何あせってんだよーー!」
笑顔。
まぶしいくらいに輝いているその瞳。
悪魔とは思えないくらい優しい笑顔。
意地悪なのはかわりないけど、でも、その笑顔、憎めない。
「あせってないもん。」
小さい子どもみたいにいじける私。
でもすぐにいつもみたいに戻る。
私はかばんを持ち、靴をはく。
「あれー?どこいくの?天使ちゃん……」
「学校!!!」
ちょっと怒り気味な表情、口調で私は言う。
そのままドアをバンっと音が出るくらい開けて、走った。
「待てよー。オレも行くからー。」
悪魔の声が家のほうから聞こえる。
それはどんどん遠ざかれり、やがて聞こえなくなった。
私は途中で立ち止まる。
そこは公園。
噴水の近くに腰をおろす。
「バカだな……私も…………。」
ボソっとつぶやく。
あれくらいであせってる自分が嫌い。
あいつの笑顔がディアに似ていることを認めない自分がここにいる。
あいつといれば、おかしくなりそうでこわい。
試練のこと、忘れちゃいそうでこわい。
ディアのこと、思い出すたびに辛い想いをする。
「今日……学校サボろう……」
私はスッと立ち上がり、近くのブランコに腰を下ろす。
頭の中で何度も繰り返されるあの日の出来事。
悪魔との生活、過去のこと。
思い出さないようにしていた。
だからいつも試練のことを頭にやって……
でも今は悪魔がいる。
だからそんなこと考えているひまがない。
悪魔に天使の気持ちを思い出させなきゃいけない。
そのことを考えなきゃ……。
ゆらいじゃダメ。
心を許したら負け。
これは試練なのよ。
「おじょーうさん!おっひとっりでっすか?」
頭上から聞こえてくる声に嫌な予感。
私は声のほうを向かず、その場から走って逃走!!
「待ってってばー。」
追いかけてくる。
こないで。
こないで。
こないで。
ひたすら逃げる。
疲れてだんだん遅くなる。
「待てっていってんだろ?!」
口調は強くなる。
私の腕を強く引っ張る。
悪魔だ。
「はなしてよ!!」
思い切り悪魔の手を振りはらう。
悪魔の表情をうかがう。
「え……」
悪魔の表情は、どこかせつなさそうな……
何かを思いつめているような、そんな瞳をした表情だった。
「だよな。やっぱこんな姿じゃ……な。」
「え?なんのこと……」
意味深発言。
「なんもねぇよ!じゃーな。」
「えっ……ちょっ……」
悪魔は空を飛びながら学校へ向かった。
あんな姿みられたら大騒ぎになるのに。
バカだなぁ…………。
なんで……。
意味わかんないよ。
やっぱり、天使だから?
天使だから悪魔の気持ち、わかんないの?
私が悪魔だったら、悪魔が天使だったら、あんたの気持ち、分かったのかな?
この試練は難しすぎるよ……ディア。
02エンド
2009/5/6 : 加筆修正