心を閉ざしてしまった女の子のぬいぐるみの恋

W嘘と真

その日も、いつものように華夜ちゃんと公園で一緒に遊んでいた。
ぬいぐるみの僕を捨てた、真衣ちゃんの事を時々思い出しながら……。

「でね、華夜ちゃんは……」

話の途中で、僕は気がついてしまった。

真衣ちゃんが、公園の外で、男の子に囲まれて、何かを言われているところを。

僕は気になって、思わず耳を傾けてしまった。

「お前〜中学生にもなって、ぬいぐるみと遊んでるんだってな!!!」

「うっわー!幼稚〜。」

男の子達は、真衣ちゃんが持ってるぬいぐるみを取り上げて、川へ投げた。

「やめてよ!!やめて・・・!!!」

真衣ちゃん、泣いてた。

男の子達はひどいよ。

ぬいぐるみをあんなふうに……。



もしかして……?
僕を捨てたのは、そんな男の子から守るため?
あんな風にされるのを分かっていて・・・だから?



ひどいのは僕のほうだ。
何にも知らないくせに、真衣ちゃんのこと忘れようとした。
今だって。
ぬいぐるみが動けない事を理由に、真衣ちゃんの事を見てるだけ。

最低だ。僕は。



ね、華夜ちゃんも、そう思うでしょ……。



アレ?
いない!!!
華夜ちゃん、いない!!!

どこに行ったんだ?

あたりを見回すと、川に入る華夜ちゃんの姿。

ダメだよ!
そんなところ、一人で入ったら……!!
危ないよ……!!!!

守れない。
ぬいぐるみには。

そう思ったとき、華夜ちゃんがぱたぱたと足音を立てて戻ってくる音が聞こえた。

「くまさん!このぬいぐるみ、あのおねえちゃんにわたしてくるから、一緒に来て!!」

え?
まさか、そのぬいぐるみを渡すために……川へ?

男の子がいなくなり、真衣ちゃんが一人立ち尽くしているところに、華夜ちゃんは行った。

「おねえちゃん!このぬいぐるみ、おねえちゃんのでしょ?はい!!」

投げ落とされ、どろどろになったぬいぐるみを真衣ちゃんに渡す。

でも、真衣ちゃんは受け取らない。

「いいの。そのぬいぐるみ、あなたにあげる。」

「え?どうして?だって、あんなに大事そうに抱えていたのに……」

「また、男の子達に川に投げられては可哀相だから。あなたにあげる!」

そう言って、真衣ちゃんは走り去ってしまった。

「よかったのかな……」

華夜ちゃんは、そうつぶやいた。
僕の予想は当たってた。
やっぱり真衣ちゃんは……。

ぬいぐるみの僕を守るために捨てたんだ。


Wエンド
2009/5/6 : 加筆修正